小説「宇宙猫」

「宇宙猫」

宇宙からきたペットを飼う。
父さんには反対されたが、おじいちゃんは許してくれた。
裏の山でこっそり飼うことになった。

宇宙猫は大きくてやわらかい。
月育ちだから発育がいいのだ。

でもこっそりつれてきたミーちゃんは三か月後に息を引き取った。
地球の重力では十分な血圧を維持できなかったらしい。

おじいちゃんは何度も謝ってくれた。
でも私が悪いのだ。宇宙猫を地球で飼いたいなんて言ったから。

 

 

 「狐の嫁入り2018」

フェイスブックに『結婚しました』の文字。
最近祝福よりも焦りや不安を感じるようになったそんな報告。
誰だろうとみてみれば、みたことのない見目麗しい男女。
間違いで表示されたのかと思ったけど、気まぐれでいいねを押しておいた。
新郎新婦は雨上がりの空の下で微笑んでいた。
ちょっぴり虹もかかっていていい写真だと思った。
その夜、狐たちが祝う宴の席でお酒を頂戴する夢を見た。

 

 

「千年道路」

彼女はその少し曲がったガードレールによく腰掛けた。
何を考えているのかはわからない。
「えー?私も好きだよ」と言っていたが、多分聞いた俺が悪かったんだろう。

その薄い灰色の瞳からはうまく気持ちを読み取れない。

 

——————千年後————————

 

あきらかに人工的に舗装された地面を発見した。
先史文明の遺物だろう。
そばには道に沿って真っ黒に錆びた鉄製の柵のようなものがところどころ朽ちて崩れながら続いていた。
「見て見て」
同僚がそれに腰掛けて見せた。一応遺物には触らないルールだが、少しくらいならかまわないだろう。
「うわ」
柵は劣化していて重さに耐えきれず崩れた。彼女がしりもちをついて後ろに倒れた。
僕は走ってそばに行き手を貸す。
「大丈夫?」
「うん、びっくりした」
彼女が手を取って立ち上がろうとしたとき、横からガラガラと音が聞こえてきた。
「あ、やば」
「あ」
見ると同僚が崩したところから連鎖して柵が全部次々と崩れてしまっていた。
遺物を壊すのはかなりまずいんだけど。
「報告書には崩れてましたって書こう」
同僚が僕の手を取って立ち上がりながら言う。
「いや、元からただの鉄の塊だったことにして、報告しなければいいよ」
「おお、そうだね。そうしよう」
僕らは納得して帰路に就いた。
報告書には「先史文明の遺物:舗装された道らしきものを発見。数十メートル。他には特になし。」とだけ書いた。
今後誰かがあそこに行くこともないだろう。かなり遠いし、よほどのもの好きじゃなければ誰も荒野の先までは探索に行かない。
あったとしても、崩れた鉄の錆びた塊を見て、元が柵だったとは誰も思わないだろう。

 

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それも今や懐かしい。
遺物調査時代の同僚とも30年以上会っていない。

ふと見たメール画面には孫からの誕生日プレゼントの催促。

「宇宙猫をお父さんに内緒で飼いたいの」